足の筋肉は、立つ、歩く、走るなどさまざまな日常動作に関係しており、身体のなかでも特に重要な部位とされています。上半身の筋肉に比べると足の筋肉は年齢とともに減少しやすいため、日頃からのトレーニングで脚力の維持への意識が大切です。
しかし、足にはどのような筋肉があり、筋力の維持がどれほど重要なのか、知らない方も多いでしょう。
この記事では、足の筋肉の働きや筋力を維持する重要性、日常生活に取り入れやすい効果的な筋トレなどを紹介します。
主な足の筋肉
足の筋肉は、身体全体を支えるほか、立ったり歩いたりなどの日常の基本動作に使われます。足にあるさまざまな筋肉のうち、重要とされるものが次の4つの筋肉です。
筋肉の種類 | 主な特徴 |
大腿四頭筋(だいたいしとうきん) | ・大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋からなる太もも表側にある筋群の総称で、膝関節の曲げ伸ばしに関わる。 ・人体で大きな筋肉のひとつで、身体を支えるのに重要な役割を果たす。 |
ハムストリングス | ・半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋からなる太もも裏側の筋肉の総称で、股関節、膝や足首の関節に影響する。 ・立つ、歩く、座るなどの日常動作の基礎となる。 |
前脛骨筋(ぜんけいこつきん) | ・膝から足首にかけての脛(すね)についている筋肉で、足首の働きの半分を担う。 ・歩行時に良く使われ、筋力の減少などによりつまずいて転倒しやすくなる。 |
腓腹筋(ひふくきん) | ・ふくらはぎを構成するヒラメ筋の外側にある筋肉で、歩行やランニング、ジャンプなどの動作、特に瞬発力を必要とするときに使われる。 |
足の筋肉を鍛える重要性
身体の筋肉は年齢とともに少しずつ減っていきます。さらに、足を含む下半身の筋肉は、上半身に比べて減りやすいとされているため、筋力を低下させないように日頃からの意識が大切です。
まずは、足の筋肉を鍛える重要性を紹介します。
生活の質を維持する
足の筋肉は、立つ、座る、歩く、姿勢を維持するなど、日常で必要となる動作を支えています。筋力のある若いうちは気にならなくても、加齢により筋力が低下してくると、日常生活のさまざまなシーンで支障をきたす可能性があります。
筋肉は大きいほど鍛えやすく、また衰えやすい傾向があります。足の筋肉の場合、大腿四頭筋から衰え始めることが一般的です。すると、膝を持ち上げることが難しくなり、ちょっとした段差にもつまずきやすくなるため、転倒リスクが増します。また、少しずつ前のめりになり、歩幅が狭くなっていくなど、正しい姿勢を保てなくなります。
ほかの筋肉も衰えていくと、やがてはイスから立ち上がることもひとりではできなくなる恐れがあります。年齢を重ねても日常動作にトラブルのない生活を送るには、脚力の維持を心がけることが大切です。
生活の質を維持できれば、サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)や要介護の前段階にあたるフレイル(虚弱)の予防にもつながります。
腰痛の予防になる
荷物を持ち上げるときなどにかがむ姿勢も、足の筋肉が関わっています。
中腰になるには骨盤を前傾させるとともに背中を曲げる動作が行われます。このとき大切なことがハムストリングスの伸縮です。ハムストリングスが硬いと足の筋肉がスムーズに伸びず、伸びなかった分を背中でカバーします。すると、腰をかがめるために背中を大きく曲げることになり、腰に大きな負担をかけます。
足の筋肉を鍛えておくとなめらかにかがむことができ、背中への負担が軽減されるため、腰痛予防につながります。
膝の痛みを防ぐ
中高年以降に増える膝痛の多くは、膝の内側の軟骨が段階的にすり減って起こる「変形性膝関節症」だとされます。痛みや違和感を放っておくと、膝関節の変形が進んでO脚となり、立ち上がることも辛くなる場合もあります。
変形性顎関節症を含む膝の痛みは足全体の筋肉の衰えが原因です。なかでも足を広範囲にサポートし、関節軟骨が受ける衝撃から膝を守る、大腿四頭筋の筋力の低下が影響します。
まだ膝に痛みを感じていないタイミングから、大腿四頭筋を中心に、トレーニングを習慣化しましょう。
足の筋肉を鍛えるメリット
足の筋肉には日常生活に必要な動作を維持する重要な役割があるほか、トレーニングをすれば、さまざまなメリットを実感できます。
基礎代謝がアップする
大腿四頭筋やハムストリングスなど大きな筋肉の多い足のトレーニングをすれば、小さな筋肉にも連動して刺激を与えられます。
体内での下半身の筋肉の割合は、60〜70%とされています。そのため、足のトレーニングだけでも身体のおよそ半分以上の筋肉を自然と鍛えられます。※1
筋力の増加は基礎代謝量のアップにつながります。基礎代謝がアップすると、運動中のエネルギー消費を高めるだけでなく、安静時により多くのエネルギーの消費を可能とします。
下半身の血流が改善する
全身の血流が悪くなると、心身の不調につながります。全身に血液を送り出すのは心臓のポンプ作用です。しかし、心臓から遠い足先にはポンプの働きが届きにくく、ふくらはぎの筋肉が「第2の心臓」としての役割を果たし、下半身に下がった血液を上半身に戻すサポートをします。
足の筋肉が衰えてしまうと大切なポンプの働きまで弱くなり、むくみや冷えを起こします。ポンプ作用が十分に機能するように、日頃からふくらはぎを中心とした下肢の筋肉を鍛えておきましょう。
身体能力が上がる
筋肉は身体を動かす原動力です。鍛えれば鍛えるほど筋力が高まり、身体能力が上がります。筋肉量ですべてが決まるわけではありませんが、身体を動かす基盤となるものが筋肉です。※2 特に、「立つ」「歩く」「走る」など、運動に深く関わる足の筋肉は身体能力に影響しやすいでしょう。
足の筋肉だけに限られた話ではありませんが、筋肉は加齢とともに減りやすく、日頃から意識して鍛えなければ少しずつ衰えていきます。毎日の運動の習慣化が重要です。
足の筋肉を鍛えるおすすめの筋トレメニュー
加齢や運動不足の影響を受けやすい足の筋肉は、日々のトレーニングで鍛えましょう。以下で、毎日の生活で取り入れやすい足の代表的な筋トレメニューを4つ紹介します。
スクワット
スクワットは、足のなかでもとりわけ大きく、日常動作に欠かせない大腿四頭筋を鍛えられる筋トレです。日常動作の多くは大腿四頭筋だけではなく、ハムストリングスやおしりの筋肉である大殿筋、腹筋や背筋などと連動しています。スクワットはこれら幅広い筋肉を鍛えられます。
【スクワットの方法(10回×3セット)】
- 足を肩幅に開き、つま先と膝の向きをそろえて立つ
- 腕を胸の前で交差させる
- 息を吸いながら膝を90度曲がるまで2~3秒かけて腰を下ろす
- 腰を下ろしたら、息を吐きながら1~2秒かけて元の位置に戻る
しゃがんで立ち上がる動作を繰り返すスクワットは、分かりやすく始めやすい筋トレです。しかし、フォームを間違えると膝関節を痛めやすいので注意が必要です。
ヒップリフト
ヒップリフトは、大殿筋からハムストリングスにかけて、足の背面を中心に鍛えられるトレーニングです。
【ヒップリフトの方法(10回×2セット)】
- 仰向けに寝て両足は肩幅程度に開き、膝を立てて直角に曲げる
- 伸ばした両腕で体を支えながら太ももとおしりに力を入れて下半身を持ち上げる
- 呼吸をしながら②の状態を5秒キープする
- ゆっくりと元の姿勢に戻る
効果を高めるには、下半身を持ち上げたとき、胸からヒザまで真っ直ぐなラインを描きましょう。
スタンディング・カーフレイズ
ふくらはぎを持ち上げる筋トレがスタンディング・カーフレイズです。つま先を上げると前脛骨筋を、かかとを上げると腓腹筋(ふくらはぎ)を鍛えられます。
【スタンディング・カーフレイズの方法(各10~30回ずつ)】
- イスの背もたれや壁などにつかまり、足を肩幅に開いて立つ
- 両足のかかとを持ち上げてゆっくり下ろす
- 次に、両足のつま先を持ち上げてゆっくり下ろす
かかとやつま先を持ち上げた状態を1秒以上キープして、筋肉に十分な刺激を与えます。ながら運動として取り入れやすいので、忙しい方にもおすすめです。
ランジ
ランジは、大腿四頭筋、ハムストリングをはじめ、足の筋肉をバランス良く鍛えられる筋トレです。足を踏み込んで身体を下げる自重トレーニングですが、スクワットより強い負荷をかけられます。
【ランジの方法(左右10回ずつ)】
- 両手を胸の前で組み、両足を肩幅に開いて直立する
- 右足を大きく前に踏み出す
- 右ひざが直角になるよう曲げていき、右太ももの裏側と床が平行になるまで腰を落とす
- 元の位置に戻る
- 左足も同様に行う
膝関節を痛めないように、つま先、曲げたヒザ、太ももがまっすぐ同じ方向を向くように意識します。また背中を丸めたり反らしたりせず、まっすぐ伸ばして体幹を安定させることも重要です。
効率的に足の筋肉を鍛えるポイント
放っておくと少しずつ減る足の筋肉を維持するには、無理のないトレーニングの持続が重要です。そこで、効率的に足の筋肉を鍛えるポイントを解説します。
筋トレは正しいフォームを守る
筋トレでは正しいフォームがなにより重要です。フォームの誤りは、期待される筋トレ効果を得られないばかりか、腰痛や膝痛などのケガや傷みが生じる原因にもなります。
例えば、スクワットでは、かがんだときにヒザがつま先より前に出ないように重心をやや後ろにして行わなければ、膝関節へ過度の負担をかけてしまいます。
正しいフォームが分からない、きちんとできているか不安があるなどの場合には、パーソナルジムなどで教えてもらうことがおすすめです。
鍛えている筋肉を意識する
刺激を与えている筋肉を意識しながら筋トレを行うと、効果が高まるとされています。
筋トレは鍛える筋肉を収縮させて行われます。「筋肉が伸びている」、「負荷を感じている」などの意識を持つと、脳の運動野にも運動による刺激が伝わって筋肉の収縮に意識が集中します。※3
十分な呼吸を心がける
筋トレをするには、強い筋力を発揮させる必要があります。このとき、酸素が十分になければ、筋肉を動かすエネルギーの生成が上手くいかず、筋肉疲労の元となる乳酸がたまります。※4
そのため、筋トレ中は呼吸を十分に行うことが大切です。呼吸を止めて筋トレを行うと血圧が急上昇するなど、トレーニングの弊害になる可能性もあります。「筋力を使うときには息を吐く」を基本とし、新鮮な酸素を取り込みながらトレーニングを行いましょう。
足の筋肉を鍛えてバランスの取れた健康な身体を手に入れよう
足の筋肉は、日常動作に関わる基盤であるとともに、「第二の心臓」とも呼ばれ、下半身の血流にも作用する重要な部位です。一方で、上半身よりも衰えやすいとされており、日々のトレーニングで鍛え続けて筋力を保つことが、むくみや腰痛、膝痛の予防、さらには将来の生活の質の維持につながります。
足の筋肉を維持するために、今日からでも、筋トレを始めましょう。
もし筋トレの正しいフォームややり方が分からなければ、24/7Workout(ワークアウト)へぜひご相談ください。知識や経験豊富なパーソナルトレーナーがマンツーマンで丁寧に指導します。
参照文献
※1 大和製衡(やまとせいこう)株式会社.Body Planner 測定結果のみかた. https://www.yamato-scale.co.jp/upload/files/%E3%83%9C%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BC%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%BF%E3%81%8B%E3%81%9F.pdf(参照 2023年10月4日)
※2 日立製作所水戸総合病院内科.運動能力と使用筋肉量の関係. https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/29/6/29_499/_pdf/-char/ja(参照 2023年10月4日)
※3 幸田 利敬.筋力トレーニングについて. https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika1986/9/3/9_3_131/_pdf(参照 2023年10月4日)
※4 藤本 繁夫.運動中の上手な呼吸方法について.https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DB00011366.pdf(参照 2023年10月4日)
<監修者プロフィール>
宋貴彰
整形外科学会認定 整形外科専門医
モッズクリニック名古屋院 院長
外傷や四肢の手術など、様々な手術を行ってきた。現在は脂肪吸引と豊胸だけで年間1,000件以上の手術を担当している。筋骨格のスペシャリストとして、脳内に叩き込まれた「解剖学の知識」を活かし、患者様一人ひとりの筋骨格を意識した“唯一無二のボディライン”を実現する。