食べ物には血圧を上げるものと、血圧を下げるものがあります。高血圧と指摘されたら血圧を上げやすい食べ物を控えて、血圧を下げてくれる食べ物を摂っていくように意識しましょう。また高血圧の予防には、肥満の改善も効果的です。
この記事では、高血圧の定義とともに、高血圧や肥満を改善するための食事に取り入れたい食品について解説します。
高血圧とは
高血圧は、日本高血圧学会の高血圧診断基準で、診察室での収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合とされています。※1
高血圧の原因の多くは、塩分の摂り過ぎや肥満です。※2肥満をともなう高血圧は、血清脂質や血糖、尿酸、肝機能にも影響を与える場合があり、メタボリックシンドロームにも進行しかねません。
肥満がない場合でも、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などのリスクが高まる恐れがあるため、早期の予防と改善が大切です。
高血圧の原因となる食べ物
高血圧の原因となる食べ物は、次のようなものです。
- 漬物
- 佃煮
- 干物
- 練り製品
- 肉加工品(ハムやソーセージ)など
ラーメンの汁、味噌汁、うどんの汁など汁物も塩分が多いため、飲み干すことで高血圧の原因になりやすいので注意が必要です。高血圧を指摘された場合、麺類の汁は飲まないようにするなどの減塩対策をすると良いでしょう。※3
血圧を下げる効果がある食品
血圧を下げる効果がある食品を解説します。
たんぱく質を含む食品
たんぱく質は血管を補強し、ナトリウムの排泄を促進します。
ナトリウムはミネラルのひとつで、主に塩分で摂取されます。ナトリウムは、人の身体の浸透圧を調節する役割がありますが、摂り過ぎる浸透圧の関係で細胞内の水分が血管などへ漏れ出てしまい、高血圧の原因になるので注意が必要です。また高血圧以外にも、むくみや口の渇き、胃がん・食道がんのリスクを高めることが報告されています。※4
たんぱく質を摂るときには、魚、卵、肉(脂肪の少ない部位)などの動物性たんぱく質食品と、大豆、大豆製品の植物性たんぱく質食品をバランス良く摂ると良いでしょう。また野菜や果物を一緒に摂ることで、ナトリウムの排泄を促進することができるので、おすすめです。※5
カルシウム、カリウムが豊富な食品
カルシウムが不足すると、血圧が上がります。カルシウムの摂取量を増やすには、牛乳・乳製品、豆腐、緑黄色野菜を摂ると良いでしょう。
またカリウムは、ナトリウムを排泄させる働きがあります。カリウムを増やすには、新鮮な野菜、果物を積極的に食べるのがおすすめです。カリウムは水に溶け出しやすいため、生で食べるのが良いでしょう。
食物繊維が豊富な食品
食物繊維は、排泄されるまでの間に、胃や腸内をきれいにする働きがあります。腸管内に分泌される胆汁酸は、食物繊維に吸着されて排泄され、余った分は再度吸収されて胆のうに戻ります。
食物繊維によって排泄された胆汁酸は、高血圧の原因になるコレステロールを使って新たに作られます。胆汁酸を作るときのコレステロールは、肝臓に蓄えられていた分が使われることになるため、食物繊維を摂ると血中のコレステロールが減少し血圧を下げる効果が期待できるでしょう。※6
なお、食物繊維は野菜に多く含まれます。具体的には次のとおりです。
- そば
- ライ麦パン
- しらたき
- さつまいも
- 切り干し大根
- かぼちゃ
- ごぼう
- たけのこ
- ブロッコリー
- モロヘイヤ
- 糸引き納豆
- いんげん豆
- あずき
- おから
- しいたけ
- ひじき
積極的に野菜を食べて食物繊維を身体に取り入れましょう。
植物油、魚油
植物油や魚油には善玉コレステロールを増やし血栓を防ぎ、血圧を下げる作用があります。
増えすぎたLDLコレステロール(悪玉コレステロール)は、動脈硬化を促進します。HDLコレステロール(善玉コレステロール)は、余分なコレステロールを回収し、さらに血管壁にたまったコレステロールを除去し、肝臓へもどす役割があります。
このため、善玉コレステロールが豊富に含まれる食物油や魚油を摂ると脈硬化を予防改善し、血圧を下げる効果が期待できます。
血圧を下げるための食事でのポイント
血圧を下げるための食事でのポイントを解説します。
「減塩食」を意識する
高血圧の多くの原因は、塩分の摂り過ぎです。高血圧を指摘されたら、減塩食にする必要があります。
減塩のしょうゆや味噌を使うのはもちろんのこと、調味料の使い方を変えてみるのがおすすめです。また、調味料を料理の上からかけるのではなく小皿に出して使うと、調味料の使いすぎを防ぐことができるでしょう。
食材そのものに味があるものを使って調理するといったひと工夫をするのもひとつの方法です。いままで濃い味に慣れていた人は、薄味に慣れていきましょう。
カリウムなどのミネラルが豊富に含まれる食品を使う
カリウムやカルシウムなどのミネラルは、血圧を下げてくれる効果が期待できます。
カリウムは、野菜や果物に豊富に含まれます。カリウムは水に溶けやすいため、生で食べるか水に溶け出たカリウムも摂れる汁物や鍋などの調理方法を選ぶと良いでしょう。
食物繊維が含まれる食品を摂る
食物繊維は、腸内のさまざまなものを吸着して外に排出します。
腸内に分泌される胆汁は、作られるときにコレステロールが使われます。胆汁が食物繊維と一緒に排泄されることで、新たに胆汁を作るためにコレステロールが使われるので、食物繊維を豊富に含まれる食品を摂っていくことが大切です。
食物繊維を多く含む、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類などの食品から、1日3~4gを摂っていくことが推奨されています。
お酒は適量で飲む
少量のアルコールは血圧を一時的に低下させますが、長期間の飲酒は血圧を上昇させ、高血圧の原因となります。さらに飲酒はそのほかの循環器疾患のリスク因子にもなるとされています。
またお酒自体だけでなく、お酒のつまみは味が濃く塩分も高い料理が多く、塩分の摂り過ぎになることでも、高血圧の原因につながります。お酒は適量にして飲み過ぎないように注意しましょう。
栄養バランス良く食べる
食事で大切なのは、栄養バランス良く食べることです。以下のように栄養素によって身体での役割が異なります。
栄養素 | 役割 |
糖質 | 活動時にエネルギーとして使われる |
たんぱく質・脂質 | 筋肉や皮膚などの身体を作る |
ミネラル・ビタミン | 身体の調子を整える |
人の身体はさまざまな栄養素のおかげで健康を保つことが出来ています。栄養バランス良く摂ることで、身体の調子も整い高血圧の予防改善にもつながるため、血圧を安定させるためには、栄養バランスの良い食事を摂るよう意識しましょう。
DASH食にする
DASH食とは、アメリカで開発された血圧を上げないための食事のことです。飽和脂肪、総脂肪、コレステロール、赤肉、菓子、加糖飲料を制限して、果物、野菜、低脂肪乳製品、全粒穀物、鶏肉、魚、ナッツを中心とした摂取を推奨しています。※7
DASH食は、がん、骨粗鬆症、糖尿病、心臓発作、脳卒中、心血管疾患なども予防すると示唆されているので、健康を気にされている人にはおすすめの食事方法といえます。
血圧を下げるための生活習慣でのポイント
血圧を下げるための生活習慣でのポイントを解説します。
規則正しい食生活で腹八分目にする
ひとつめのポイントとしては、栄養バランスの良い食事を1日3回規則正しく食べることです。肥満になると血圧が高くなるため、常に腹八分を心がけて食べるようにすると良いでしょう。
また、よく噛んで食べると満腹中枢が働きやすくなり、食べ過ぎを防ぐことができます。
適度に運動を行う
運動で、肥満を予防・解消することも大切です。太りすぎは血管や心臓への負荷がかかり、動脈硬化を進める原因にもなります。できるだけ階段を使ったり、ひと駅分歩いたりするだけでも運動になるため、運動する時間がない場合も、日常生活の中で身体を動かす工夫をしましょう。
また、適正体重を知って維持することも大切です。週に1回は体重を測って体重の変化を見ると、自分の体調管理の意識も高まるでしょう。
質の良い睡眠を意識する
睡眠時間5時間未満の人は、7~8時間睡眠をとっている人に比べて、2.10倍も高血圧のリスクが高いことが研究で示されています。※8また、睡眠障害が生活習慣病の罹患リスクを高め症状を悪化させることや、その発症メカニズムが研究で明らかになってきています。
さらに睡眠時無呼吸症候群の患者は、夜間の頻回の呼吸停止によって「低酸素血症と交感神経の緊張(血管収縮)」「酸化ストレスや炎症」「代謝異常」などの生活習慣病の準備状態が進むことが研究で分かってきました。また5~10年で高血圧や心不全、脳血管障害に罹患しやすくなるともいわれています。
慢性不眠症の患者さんでは「交感神経の緊張」「糖質コルチコイド(血糖を上昇させる)の過剰分泌」など、多くの生活習慣病リスクを抱えている場合も多くあります。
睡眠の質は、血圧にも大きく関係するため、良質な睡眠が取れるように寝る前の工夫などを行いましょう。
血圧測定を習慣化する
高血圧を指摘されたら、血圧測定を習慣化しましょう。血圧は、場所や時間によって変動します。病院では血圧が高めに出る場合も少なくありません。
毎日同じ時間に朝晩と血圧測定することで、自分の血圧変動の傾向が分かります。日々血圧測定をして、高血圧が改善されているのか悪化しているのか確認をしましょう。
悪化傾向なのか改善傾向なのかで、その後の食事や運動を見直すきっかけにもなるため、高血圧を指摘されたら、毎日決まった時間に血圧測定をするのがおすすめです。
高血圧を改善するためには食事と適度な運動を意識しよう
高血圧を改善する際の基本は、食事と運動です。肥満傾向であれば、痩せていくことが必要です。医師等の栄養指導に従い、減塩食などの食事の見直しを行うようにしましょう。また、高血圧の診断を受けている方は、医師等にトレーニングの可否を確認したうえで筋トレを行うと良いでしょう。
予防のための食事とあわせて、筋力トレを行いたい場合は、パーソナルジムの利用もおすすめです。24/7Workoutでは、個別に筋トレメニューを提案しています。何から筋トレをはじめたら良いのか分からない場合は、ぜひ無料カウンセリングをお申し込みください。
参照文献
※1e-ヘルスネット.高血圧.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html(参照2023年9月25日)
※2e-ヘルスネット.栄養・食生活と高血圧.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-002.html(参照2023年9月25日)
※3順天堂大学医学部付属 順天堂医院.高血圧症の食事療法.https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/support/eiyo/method/syokuji03.html(参照2023年9月25日)
※4e-ヘルスネット.ナトリウム.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-024.html(参照2023年9月25日)
※5 京都鞍馬口医療センター.高血圧症の食事.https://kyoto.jcho.go.jp/%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7%E7%97%87%E3%81%AE%E9%A3%9F%E4%BA%8B/(参照2023年9月25日)
※6 国立循環器病研究センター.食事療法について.https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet02/(参照2023年9月25日)
※7 山本 亜衣.新冨 瑞生.元井 彩加.三浦公志郎.巴 美樹.DASH 食弁当の血圧改善効果検証のための パイロット研究.https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/77/5/77_133/_pdf/-char/ja(参照2023年9月25日)
※8 河邊博史.斎藤郁夫 日常生活での睡眠不足は起床時家庭血圧に影響を及ぼすか?.http://www.hcc.keio.ac.jp/ja/research/assets/files/research/bulletin/boh2007/25-9-14.pdf(参照2023年9月25日)
<監修者プロフィール>
高取優二
医学博士、腎臓専門医。
日本腎臓学会専門医・指導医、日本透析医学会専門医・指導医、日本抗加齢医学会専門医。
1975年生まれ。鳥取大学医学部卒業後、岡山大学病院腎・免疫・内分泌代謝内科などを経て、現在は埼友クリニック外来部長。抗加齢医学(アンチエイジング)の観点から腎臓病を捉えなおす新たな手法に取り組んでいる。