「仕事や家事が忙しい」「運動するのが面倒くさい」といった理由で運動不足になる方が多くいます。※1
これまで運動の習慣がなく、家事や仕事に忙しい方が運動を継続して行うにはどうしたら良いのでしょうか。
この記事では、運動不足を解消したい方に向けて、気軽に始めて続けやすい運動や、運動量の目安について紹介します。
運動不足によって起こる影響とは
運動不足の状態のとき、なんとなく身体が重くて調子が悪いと感じる方も多いのではないでしょうか。
運動不足によって心と身体の健康にどのような影響が起こるのか、それぞれ解説します。
体力や筋力が低下する
運動が不足して筋肉を動かす機会が減ると細胞内のカルシウム濃度が低下し、筋肉が減ってしまいます。※2
筋力が低下すると、「立つ」「歩く」という日常的な動作がしづらくなることで活動量が低下し、ますます筋力や体力の低下につながります。
また、身体を動かさないことが原因で体温が上がらず血行が悪くなると、肩こりや腰痛などの症状があらわれる場合もあります。
生活習慣病の発症リスクが高まる
運動不足は、さまざまな生活習慣病を引き起こす原因にもなります。
運動不足によってエネルギーが消費されない状態になると、内臓脂肪が増加し、次のような生活習慣病の発症リスクが高まります。※3
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
内臓脂肪が蓄積されている場合、見た目が太っていなくても糖尿病を発症することがあるので注意が必要です。
近年日本人の食事が欧米化してきていますが、日本人は欧米人に比べて「インスリン」の分泌が低いため、同じ食事をしても糖尿病を発症しやすい傾向にあります。
内臓脂肪が増えることで、血管が固くなり、血圧も上がります。糖尿病と関連して、血糖値が高くなることでも血圧が上がるので、内臓脂肪が多いと高血圧症にもなりやすくなるのです。
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態のことで、悪玉コレステロールや中性脂肪の血中濃度が異常である場合に診断されます。
また、運動不足は心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる重大な病気を招く恐れもあります。※4
心筋梗塞も脳梗塞も、血液が固まって血管が詰まることが原因で起こるため、運動によって血液の循環を良くすることが大切です。
メンタルの不調につながる
運動不足は、身体だけでなくメンタルの不調にも関係しています。
運動を行うと、精神を安定させる「セロトニン」という神経伝達物質が活性化されますが、運動不足によってセロトニンが欠乏し、気持ちが不安定になるなど抑うつの症状が出ることがあります。※5
また、運動不足の場合、頭が疲れていても身体は疲れていないため、寝付きが悪くなったり眠りが浅くなったりする場合がある点にも注意が必要です。
運動の効果を高めるためのポイント
運動の効果を実感するにはどうしたら良いのでしょうか。ポイントをそれぞれ解説します。
無理のないペースで行う
運動の効果が実感できるようになるには、運動を継続していくことが必要です。そのためには、自分の体力やスケジュールに無理のないペースで行いましょう。
無理をして強度やペースを上げると身体に負担がかかり、ケガの原因となる恐れもあります。
おすすめの運動は次のとおりです。
- ストレッチ
- 体操
- ウォーキング
- ゆったりとしたペースのジョギング
厚生労働省では、適切な運動量の基準として、次のように定めています。
- 18~64歳:歩行またはそれ以上の強度の運動を毎日60分程度
- 65歳以上:横になったままや座ったままにならない身体活動を毎日40分程度※6
毎日60分ウォーキングをするハードルが高い方は、短時間でも良いので続けられる運動を選びましょう。
1ヶ月以上継続して行う
運動の効果を実感するためには、1ヶ月以上は継続して行うことが大切です。
仕事が忙しくて運動の時間が確保できない場合は、日常生活でできる「ながら運動」がおすすめです。「ながら運動」とは、例えば次のような運動です。
【通勤・通学時】
- 電車やバスで座らずに立つ
- ひとつ手前の駅で降りて歩く
- エレベーターを使わず階段を利用する
【自宅】
- 寝る前や起床時に布団の上でストレッチをする
- つま先立ちで歯磨きする
- 掃除機ではなく雑巾で拭き掃除する
毎日少しずつでも身体に刺激を与えて、運動不足を解消しましょう。
バランスのよい食事を摂る
健康な身体作りには、運動も大事ですがバランスのよい食事も欠かせません。
炭水化物や脂質、タンパク質は、ダイエットでは敬遠されやすいですが、全く摂らないと身体を動かすエネルギー源が足りなくなってしまいます。
炭水化物、脂質、タンパク質は、身体で「代謝」されてエネルギーになります。この代謝に必要な栄養素が野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルです。
また、運動に必要な筋肉を作るためにはタンパク質が必要です。筋肉を増やしたい場合は、とくにタンパク質の摂取を意識するようにしましょう。
何から始めるか分からない方へ!運動不足の方におすすめのトレーニング
運動不足を解消したいものの、何を始めるか分からない方へ、年代別におすすめの運動を紹介します。
20代〜30代の方におすすめの運動
20代〜30代で「体力はそれなりにあるけど仕事が忙しくて時間が足りない」という若い世代には、気軽に始められる次のような運動がおすすめです。
- ラジオ体操
- スクワット
- 足上げ腹筋
ラジオ体操
小中学校以来やったことがない方も多いかもしれませんが、ラジオ体操は大人にこそおすすめしたい全身運動です。
運動初心者でも約3分で気軽に取り組むことができ、骨や関節、筋肉をまんべんなく動かせます。日常生活でなかなか使わない筋肉や関節を使って全身の血行を促進するので、身体の代謝も上がって美容と健康維持に効果があります。
スクワット
スクワットで鍛えられるのは、下半身の太腿の表・裏・お尻といった下肢全体です。
体幹も刺激できるので消費カロリーはかなり多く、代謝が上がってダイエット効果も期待できます。
また、運動不足になると下半身が衰えやすくなります。器具も使わず気軽に始められるスクワットを習慣化すると、普段なかなか動かす機会が少ない下半身を中心に鍛えることができます。
足上げ腹筋
足上げ腹筋は「レッグレイズ」と呼ばれる床に寝た状態から足を上げ下げする運動で、とくに下っ腹が気になる方におすすめです。
腹筋の中でも「腹直筋」と呼ばれる、おなかの中央にある腹筋の下部に効く運動で、ほかに股関節まわりやお尻、太ももなども鍛えられます。
寝転がるだけで器具も使わず気軽にできるのにも関わらず、日常生活であまり使うことがない下腹部を鍛えることができるので、全身の代謝も上げられます。
レッグレイズは、次のように行います。
- 床に寝た状態で身体の横に手を置く
- 腰を床につけるように意識しながら、両足をゆっくり浮かせる
- 垂直の状態まで上げたら、ゆっくり元に戻す。このとき足は床につけない
- まずは10回つづける
正しいフォームで行うことが大切なので、できれば鏡に写して確認しながら行いましょう。
40代以上の方におすすめの運動
40代以上になると、20代や30代に比べると体力は低下しやすくなりますが、仕事や子育てが落ち着いて時間に余裕がある方も多くなってきます。
40代以上は、時間をかけながら負荷の弱い運動を行いましょう。おすすめの運動メニューは次のとおりです。
- 筋トレ(レッグレイズ、アッパーバックエクステンション)
- スイミング
筋トレ
40代以上で運動不足の方は、自宅で気軽にできる筋トレメニューから始めてみましょう。
おすすめは、床に寝た状態でできるレッグレイズ(足上げ腹筋)と、アッパーバックエクステンションです。
アッパーバックエクステンションは、胸や背中の柔軟性を高める運動で、デスクワークが多く猫背の方におすすめの運動です。骨や関節を正しい位置に戻すので、肩こりや頭痛が緩和されて呼吸が楽になり、代謝がアップします。
アッパーバックエクステンションは、次のように行います。
- ストレッチポールかバスタオルを丸めたものを床に置く
- 肩甲骨の下側にストレッチポールが当たるように床に仰向けになる
- 膝を立てて頭の後ろに手をそえて、息を吸いながら胸を開く(頭と肘を床に近づける)
- 息を吐きながら、おへそを見るように背中を丸めて上体を起こす
- 息を吸いながら元の状態へ戻って繰り返す
まずは、15回を目標に行いましょう。
ストレッチポールのかわりにバスタオルを丸めてもできるので気軽に始められます。ぜひ下半身を鍛えるレッグレイズと一緒にやってみましょう。
スイミング
40代で時間が取れる方ならスイミングがおすすめです。
スイミングは、ひざや腰への負担が少なく、しかも水中で体温を維持するため、陸上と比べてカロリー消費量が格段に上がります。
歩くだけで全身を使った有酸素運動と筋トレが同時にできるので、泳ぐのが得意でない方でも取り組めるでしょう。スイミングは全身の代謝が上がって健康維持にもダイエット効果が期待できるだけでなく、浮力によって身体の力が抜けるのでリラックス効果もあります。
自宅でできない点と水着やゴーグルなどの用具が必要な点がデメリットですが、運動強度の調節がしやすいので、初心者から上級者までおすすめの運動です。
ウォーキングやランニングはすべての年代の方におすすめ
ウォーキングやランニング(ジョギング)は、すべての年代におすすめしたい有酸素運動です。
ウォーキングやランニングは、体力の向上やダイエットのほかにも、メタボリックシンドロームの改善や生活習慣病の予防、ストレスの発散など、さまざまなメリットがあります。
週3回行うのがおすすめですが、時間が取れない場合は、通勤時に少し早めに家を出て一駅分早足で歩くだけでも十分効果があります。
気軽に楽しく続けられる運動を選び、長く継続できるように行いましょう。
運動を行う際の注意点
運動不足を解消して継続的に運動の機会を持つために気をつけたいポイントがあります。運動を行う際の注意点について以下で解説します。
ケガに注意する
久しぶりに運動を行うと身体が上手く動かずケガをする危険性が高くなります。
ケガをしないために、運動の前には必ずストレッチ(準備運動)をして身体をほぐしましょう。
体温を上げて柔軟性を高めることで身体の可動域が広がり、ケガを防ぐことができます。
水分補給を忘れずに行う
運動をするときは、必ず水分を補給しながら行いましょう。
運動をすると汗をかき、身体の水分が失われます。なくなった水分を補給せずにいると、血液が濃くなり循環不全を起こします。
酸素や栄養素の運搬や体温調節が上手くいかなくなると、熱痙攣(けいれん)を起こす、めまいを起こすなどの「熱中症」を発症する場合があります。※7
「のどが渇いた」状態では、すでに脱水が始まっているため、のどが渇く前に水分補給を行うようにしましょう。
また、運動中は水分と汗で失った塩分を同時に補給できるドリンクを飲むのがおすすめです。冷たいドリンクは体温を冷やすので、さらに熱中症予防に役立ちます。
スポーツドリンクは、水分と塩分に加え、疲労回復に役立つ糖分が入っているのでとくにおすすめです。ただし、同じ糖分でもジュースは糖分が多すぎてカロリー過多になるので、運動中は控えましょう。
運動を習慣化して運動不足を解消しよう
運動不足を感じていても、実際に運動を始めるまで至っていない方も多いでしょう。
しかし、運動不足は病気やケガを引き起こしやすいだけでなく、心の健康にも悪影響があります。気軽に始められる簡単な運動から取り入れて、運動不足を解消しましょう。
まとまった時間が取れない場合は、通勤時や日常生活のなかでできる「ながら運動」がおすすめです。短時間でも少しずつ運動を取り入れて継続することを心がけてください。
また、運動へのモチベーションが高まった場合は、パーソナルジムに通ってみるのもおすすめです。
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気になる方は、まず24/7Workoutの無料カウンセリングを受けてみてください。
参考文献
※1文部科学省.令和4年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の概要. https://www.mext.go.jp/sports/content/20230324-spt_kensport02-000028561_1.pdf(参照2023年7月13日)
※2日本医療・健康情報研究所. 保健指導リソースガイド.体を動かさないと筋肉が減少するメカニズムを解明 運動不足による悪循環 筋肉減少を防ぐ薬を開発.https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2022/010926.php(参照2023年7月13日)
※3厚生労働省. e-ヘルスネット.内臓脂肪型肥満.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-051.html(参照2023年7月13日)
※4大阪がん循環器病予防センター.身体活動http://www.osaka-ganjun.jp/health/lifestyle/physical-activity/(参照2023年7月13日)
※5スポーツ庁Web広報マガジン.数字で見る! スポーツで身体に起こる気になる「6」つのデータ.https://sports.go.jp/special/value-sports/post-29.html#an02(参照2023年7月13日)
※6厚生労働省.運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書. https://www.mhlw.go.jp/content/000306883.pdf(参照2023年7月13日)
※7厚生労働省.「健康のため水を飲もう」推進運動.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html(参照2023年7月13日)
<監修医師プロフィール>
來村昌紀
らいむらクリニック院長。
和歌山県立医科大学、千葉大学大学院卒業。医薬学博士、脳神経外科専門医、頭痛専門医・指導医、漢方専門医・指導医。
脳神経外科医をへて、漢方医学を学び、2014年千葉市に「らいむらクリニック」を開設。
内科、外科、漢方内科、頭痛外来を専門とし、クリニックの理念は「東洋医学と西洋医学を融合し、みんなを美しく、元気で、笑顔に!!」